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[執筆] studio150
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ようことせいこが行く妖怪ツアーライブin美保関@美保館-うつみようこ×伊藤せい子

美保関

その日の夕方、何かに呼ばれるようにふらっと美保関へ赴いた。

青石畳通りに面した国文化財の宿 美保館 前で、灯籠に灯りをともす準備をしておられるご主人と立ち話をすると、今夜、美保館本館アトリウムでコンサートがあるという。「どんなコンサートですか?」と尋ねると、「うつみようこさんが来られるんです。」と言われ驚いた。うつみようこさんと言えば、元メスカリン・ドライブ、元ソウル・フラワー・ユニオンのボーカリストで、現在はうつみようこ&YOKOLOCO BAND,うつみようこGROUP, UFOS等で活動されている「ミュージシャンズ・ミュージシャン」。ソウル・フラワー・ユニオンは結成当時から愛聴しており、1996年1月28日東京吉祥寺ディスクユニオンで行われたソウル・フラワー・モノノケ・サミット1st Album『アジール・チンドン』リリース スペシャル・ライブを観たことがある。これは何か運命的なものを感じ、観るしかないと19:30の開演を待つことにした。

美保館は、海上交通の要所として古くから栄えた美保関で、初めて本格的な旅館として、皇族の方々を始め、多くの文人墨客が逗留した老舗旅館。その本館アトリウムは、古き良き時代の雰囲気そのままに、とても贅沢な空間が広がっている。築百余年の木造建築は、吹き抜けで天上が高く、見るからに音の響きが良さそうだ。

伊藤せい子

19:30 夕凪の伊藤せい子さんからスタート。アコースティック・ギター弾き語りで、“言霊(ことだま)”の宿る歌が紡がれていく。おおらかな関西弁と力強く優しい歌声で、こころがじわっと暖かくなっていった。

内海ようこ

うつみようこ版『満月の夕』

そして、うつみようこさんは、ジャニス・ジョプリンの曲で始まった。
「たいしたヒット曲がないので人の曲ばかり歌ってるんです」と笑わせておられたが、この日もエルヴィス・プレスリー、ボブ・ディランと、名曲中の名曲を真正面から歌って、納得させられるシンガーは日本にそう多くはないのではないだろうか。
「若い子たちに何で歌わないんですか?(歌ってください!)と言われるんです」と、歌われた『天の生贄 ~Sacrifice~/SOUL FLOWER UNION』。SOUL FLOWER UNION 1st Album『カムイ・イピリマ(KAMUY IPIRMA)』の2曲目を飾る大好きな曲。
ちなみにアルバム冒頭一曲目は幼少期をアメリカで過ごされたうつみさんのラップが冴え渡る『お前の村の踊りを踊れ』必聴!『カムイ・イピリマ(KAMUY IPIRMA)』は、うつみさんが過去在籍したメスカリンドライブ4枚目のアルバムとして制作されたが、メスカリンドライブとニューエスト・モデルが合併し、1993年SOUL FLOWER UNIONのデビューアルバムとして発表された傑作。
「やっぱりこれを歌わないわけにはいかないかな」と『満月の夕/SOUL FLOWER UNION』中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)版、山口洋(ヒートウェイヴ)版とも違う、うつみようこ版『満月の夕』
1995年1月17日 阪神・淡路大震災 被災地の人々に寄り添い続けた名曲に息を呑んで聴き入った。

うつみようこ&伊藤せい子

さらに「伊藤せい子×うつみようこ」共演ライブ。
自らを“大阪のおばちゃん”と呼び、漫才のような掛け合いと共に『夢は夜ひらく』。
最後はどんとの名曲『波』で大団円を迎えた。

うつみようこ&伊藤せい子

美保関は古くから海の向こうからやってくるあらゆる文物、文化が上陸し、そして旅立っていった地。その歴史を育み見つめてきた美保館には、あらゆる土地からやってきた様々な人々が繰り広げた夜会の記憶が詰まっている。それを2人の旅人(ミュージシャン)が再び呼び寄せ、現在の記憶とミックスして魅せてくれた夢の夜。小泉八雲を虜にした美保関は、今も不思議な魅力に包まれている。

ようことせい子が行く妖怪ツアー
日時
2016年11月25日
会場
うつみようこ公式サイト
伊藤せい子(夕凪)公式サイト
うつみようこ&伊藤せい子live2016